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子宮頸がんとHPVワクチンに関するQ&A

きちんと知りたい、HPVワクチン

HPVワクチンは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するワクチンです。小学校6年から高校1年生相当の女子は、定期接種として3回無料で接種できます。

日本では、HPVワクチンは2013年に定期接種となりましたが、その直後から接種後の症状などの調査のために「積極的な勧奨接種」が中止されました。現在は、積極的勧奨接種が再開され、接種の機会を逃した年代のギャッチアップ接種もあります。

高校1年生相当の定期接種と高校2年生以上のキャッチアップの3回接種をすべて公費で受けるためには、標準的なスケジュールで2024年9月末まで、最短で11月中に初回接種を受ける必要があります。

世界ではワクチンによって子宮頸がんの発症が抑えられている一方で、日本の接種率は極めて低く、ワクチンがない時代と同様に子宮摘出や死亡のリスクにさらされています。

子宮頸がんは、VPDです。子宮頸がんから女性や未来を守るために、HPVワクチンについて知り、今一度しっかり考えてください。

(2024年9月更新)

HPVワクチンのキャッチアップ接種は、今からでも間に合いますか。
1997年4月2日から2008年4月1日生まれの女性は、2025年3月末まで無料でHPVワクチンを受けられます。できるだけ早くかかりつけ医や地域の小児科医、産婦人科医に相談しましょう。
HPVワクチンは3回接種が必要で標準的な接種スケジュールでは6か月間かかりますが、最短のスケジュールであれば今からでも3回とも公費で受けられる可能性があります。
9価(シルガード9)及び4価(ガーダシル)は、「2回目及び3回目の接種が初回接種の2ヵ月後及び6か月後にできない場合、2回目接種は初回接種から少なくとも1か月以上、3回目接種は2回目接種から少なくとも3か月以上間隔を置いて実施」できます。そのため、接種医と相談のうえ、2024年11月中にワクチンを受け始めることで3回を年度内に受けられます。医療機関は年末年始が休診なのでご注意ください。
2価(サーバリックス)は、「2回目の接種は1回目の接種から1~2.5か月の間で、3回目の接種は1回目の接種から5~12か月の間で調整」できるので、10月末までにワクチンを受け始めることで3回を年度内に受けられます。
いずれにしても、余裕のない日程での接種となりますので、できるだけ早くかかりつけ医や地域の小児科医、産婦人科医に相談しましょう。接種できる医療機関は自治体が公表しています。
HPV接種スケジュール

 

高校生です。今からでもHPVワクチンを受けられますか。
現在、高校生の皆さんは、2025年3月末まで無料でHPVワクチンを受けられます。できるだけ早くかかりつけ医や地域の小児科医、産婦人科医に相談しましょう。
高校1年生は定期接種、2025年度に高校2年生、3年生相当はキャッチアップ接種の対象です。HPVワクチンは3回接種が必要で、標準的な接種スケジュールでは6か月間かかりますが、最短のスケジュールであれば今からでも3回とも公費で受けられる可能性があります。
9価(シルガード9)及び4価(ガーダシル)は、「2回目及び3回目の接種が初回接種の2か月後及び6か月後にできない場合、2回目接種は初回接種から少なくとも1か月以上、3回目接種は2回目接種から少なくとも3か月以上間隔を置いて実施」できます。そのため、接種医と相談のうえ、2024年11月中にワクチンを受け始めることで3回を年度内に受けられます。医療機関は年末年始が休診なのでご注意ください。
2価(サーバリックス)は、「2回目の接種は1回目の接種から1~2.5か月の間で、3回目の接種は1回目の接種から5~12か月の間で調整」できるので、10月末までにワクチンを受け始めることで3回を年度内に受けられます。
いずれにしても、余裕のない日程での接種となりますので、できるだけ早くかかりつけ医や地域の小児科医、産婦人科医に相談しましょう。接種できる医療機関は自治体が公表しています。

 

HPVワクチンの定期接種(接種の積極的な勧奨)が再開になった理由を教えてください。
厚生労働省がHPVワクチンの効果と安全性に関する評価とワクチン接種後に生じた症状の相談・診療体制の整備によって安心して接種できるようになったからです。
2021年11月26日、厚生労働省は全国の自治体に対して、子宮頸がんの定期接種対象者に個別に予診票などを送付するように通知しました。
 
子宮頸がんを予防するHPVワクチンは、2013年4月から定期接種となりましたが、その2か月後、HPVワクチンの接種後の副反応の詳細を調査するために、接種の積極的な勧奨が中止されました。
この間、厚生労働省では、HPVワクチンの効果と安全性に関する評価、HPVワクチン接種後に生じた症状への対応として相談窓口の設置や診療体制の強化を行いました。
また国内外からの報告など、最新の知見をふまえ、ワクチンの安全性について懸念が認められないことや、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ることなどを確認したことから、長期間にわたる積極的な勧奨が再開されたということです。

 

積極的な勧奨が再開したと聞きました。医療機関に行けば、いつでも接種できますか。
定期接種およびキャッチアップ接種の対象者は自治体の案内に従って予約をしてください。接種できる医療機関は、各自治体の「予防接種協力医療機関」を参照ください。

2021年11月26日、厚生労働省から全国の自治体に対してHPVワクチンの個別案内をするように通知がありました。これにより、定期接種やキャッチアップ接種の対象者に自治体から予診票などが送付されることとなりました。

定期接種の対象者の方は、各自治体の案内に従って予約をしてください。接種できる医療機関は、各自治体の「予防接種協力医療機関」を参照ください。現在、定期接種で受けられるワクチンは、9価(シルガード9)、4価(ガーダシル)、2価(サーバリックス)です。 

 
子宮頸がんの予防対策には子宮がん検診がありますが、 なぜ、検診だけではいけないのですか。

検診だけでは、子宮頸がんの発症を防げないからです。

検診の目的はがんの早期発見、早期治療です。がんの発症予防にはワクチンが必要です。子宮頸がんの予防には、ワクチンと検診を組み合わせましょう。

HPV感染から子宮頸がん発症までの経過と予防

子宮がん検診では、がんの予防はできない
子宮がん検診は、がんの早期発見・早期治療が目的です。検診ではがんの発症を防ぐことはできません。がんの発症を防ぐには、HPV (ヒトパピローマウイルス)ワクチンを接種します。子宮頸がんには、ワクチンで防げないウイルスによる子宮頸がんもありますので、ワクチンだけでは不十分で、検診が必要です。予防には、ワクチンと検診のどちらも大切です。

 

検診で子宮頸がんが見つかったら、手術が必要 
子宮がん検診で、子宮頸がんが見つかったら、すぐに治療を始めます。幸いにも、前がん病変やごく初期の子宮頸がんで発見できたとしても、HPVに感染した部分を切り取る手術(子宮頸部円錐切除術)が必要となります。手術は、一般的には数日間の入院を要し、麻酔を伴い身体的な負担があります。手術後は、将来の妊娠・出産の際に早産リスクなどの影響が出る可能性があります。

 

検診での見落としや低い検診受診率も問題
検査には一定割合の見落としがあり、がんや前がん病変がある人でも、「異常なし」と判定され、発見がおくれてしまうことがあります。特に妊娠中の病変や若年層に多い腺がんは、見逃されることが多くあります。
また、そもそも日本では、若い年代の子宮がん検診の受診率が低く、検診を受けずに、子宮頸がんの発見が遅れることが懸念されています。がんが進行すると子宮摘出や死亡のリスクが高まります。

 

ワクチン接種が遅れた年代は、20歳からの検診を!
現在、HPVワクチンを定期接種で受けられなかった世代のキャッチアップ接種があります。ワクチン接種が遅れたことで、残念ながらすでにHPVに感染していることも考えられます。20歳以上の女性は、子宮頸がん検診も必ず受けるようにしてください。
ワクチンでHPVの感染予防、検診でがんの早期発見を組み合わせて、子宮頸がんから命と健康な子宮を守りましょう。
HPVワクチンは、本当に子宮頸がんを減らすことができるのでしょうか?
HPVワクチンを接種した女性の方が子宮頸がんになるリスクが低下しているという海外の報告があります。

 

<スウェーデン>HPVワクチン接種で浸潤性子宮頸がんのリスク63%低下 
未接種者の子宮頸がんの発症率を1とした場合、ワクチンを接種した女性の発症率は0.37となり、未接種者に比べて子宮頸がんになるリスクは63%低下しました。

 

<スウェーデン>17歳未満でのワクチン接種で、子宮頸がんの発症率が88%低下 
未接種者の子宮頸がんの発症率を1とした場合、接種者の発症率は10~16歳のワクチン接種で0.12、17~30歳のワクチン接種で0.47でした。未接種者に比べてがんになるリスクは、10~16歳のワクチン接種で88%、17~30歳のワクチン接種で53%低下しました。
早期にワクチン接種をした女性のほうが、子宮頸がんになるリスクを大幅に低下することがわかります。

*N Engl Med 2020; 383:I340-I348
[研究方法と結果]スウェーデンの10~30 歳の女児・女性集団のうち1,672,983 人を対象に、浸潤性子宮頸がんの発症を追跡しました。追跡調査の結果をHPV ワクチン接種歴と解析し、ワクチン接種と浸潤性子宮頸癌のリスクとの関連を評価しました。
追跡調査の結果、31 歳の誕生日までに子宮頸がんを発症したのは、4 価 HPV ワクチン接種者で19 人、未接種者で538 人。子宮頸がんの累積発生率( 10万人当たり)は、接種者で47 件、未接種者で94 件でした。

 

<英国>12~13歳でHPVワクチンを接種した世代は、子宮頸がんのリスクが87%低下 
[研究方法と結果]イングランドのがん登録データベースを使い、20~64歳の人をワクチンの接種状況別に子宮頸がんの罹患率を比較ました。結果は、12~13歳で接種した世代は子宮頸がんのリスクが87%低下、14~16歳で接種した世代では62%低下しました。
これらの報告から、若年層での接種がより効果的であるとわかりました。
Falcaro M, et al. Lancet. 2021;398:2084-2092.
HPVワクチンは、子宮頸がんそのものを予防する効果が証明されていないって本当ですか。
「子宮頸がんの予防が証明されていない」との指摘はHPVワクチンが使われ始めたころの昔話です。最新データでは、子宮頸がんの減少について報告されています。

 オーストラリアでは、HPVワクチンの普及により子宮がんが減少し、排除を目指しています。


出典:Hall MT et al. Lancet Public Health. 2018 Oct 1. doi: 10.1016/S2468-2667(18)30183-X.

海外の報告で、HPVワクチンの有効性が示される

最新データでは、HPV(ヒトパピローマウイルス) ワクチンを早期に導入した英国やスウェーデンから、子宮頸がんが減少したという報告があります。詳しくはこちら「Q:HPVワクチンは、本当に子宮頸がんを減らすことができるのでしょうか?」

臨床試験で、“前がん病変” をエンドポイントとした理由

HPVワクチンの臨床試験では、予防効果の指標(エンドポイント)を「子宮頸がん」ではなく前がん病変の「高度異形成」にしました。そうすることで、高度異形成が見つかった時点で治療を開始し、治験に参加した人のリスクを最小にすることができるからです。

ワクチンを接種しても、子宮頸がんになる可能性は0ではないと聞きました。接種する意味はありますか。
HPVワクチンで子宮頸がんの原因の90%を予防できます。100%予防できるわけではありませんが、可能性を大幅に減らせます。

定期接種のHPVワクチンには、9価、4価、2価のワクチンがあります。9価ワクチンは、16、18、31、33,45,52,58型のHPV感染を予防します。子宮頸がん全体の90%の原因はこれらのHPVです。

100%予防できるわけではありませんが、ワクチン接種によって子宮頸がんになるリスクを大幅に低減できますので、接種には大きな意義があると考えます。 

ワクチンで予防できないHPVによる子宮頸がんは、子宮がん検診を受けることで、早期に見つけることができます。早期発見は、がんを治す可能性を高めますので、ワクチンを接種していても検診を受けるようにしましょう。

効果が高い9価のHPVワクチンがあると聞きました。定期接種で受けられますか。
はい、定期接種やキャッチアップ接種で受けられます。2023年4月から定期接種で9価ワクチンを受けられるようになりました。

9価ワクチンの場合、初回接種が15歳未満では2回または3回接種。15歳以上では、3回接種が必要となります。  

2価や4価のHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは、子宮頸がんになりやすい16、18型HPVの感染を予防し、子宮頸がんの約70%を防ぎます。9価HPVワクチンでは、さらに31、33、45、52、58型のHPVが予防できるようになり、約90%の子宮頸がんを防ぐことができます。

 小学校6年生以上の男子は、任意接種で4価ワクチンを受けられます。 

 

HPVワクチンの種類

 価数定期・任意  ワクチン名 予防するVPD 対象者
 9価

 女子:定期接種(小学校6年生~高校1年生)

 男子は承認されていません。 

 シルガード9

90%の子宮頸がん(16、18、31、33、45、52、58型)

尖圭コンジローマ(6,11型)      

 9歳以上の女子
 4価

 女子:定期接種(小学校6年生~高校1年生)

 男子:任意接種 

 ガーダシル 70%の子宮頸がん(16、18型)
尖圭コンジローマ(6、11型)
 9歳以上の男女
 2価

 女子:定期接種(小学校6年生~高校1年生)

 男子は承認されていません。 

サーバリックス  70%の子宮頸がん(16、18型)  10歳以上の女子
HPVワクチンは男子も受けた方がいいのですか。
HPVは男性がかかるがんや感染症の原因にもなりますので、接種をお勧めします。

2020年12月、4価HPVワクチン(ガーダシル)を男子が接種できるようになりました。HPV(ヒトパピローマウイルス)は性交渉によって感染します。男性から女性へ、女性から男性へと感染が広がるため、女性のみならず男性へも接種することで病気を予防する効果が期待できます。 世界では、オーストラリアは2013年から、米国では2011年から男子への定期接種を導入し、HPV感染や前がん病変の減少が確認されています。

また、HPVは、女性の子宮頸がん以外にも中咽頭がんや肛門がんなどのがんや、尖圭コンジローマなど男性の感染症の原因にもなります。パートナーの女性を子宮頸がんから守るとともに、男性本人がHPV感染を予防することも大切です。

    

なお、男子への定期接種化が検討されています。それまでは任意接種となりますが、接種をお勧めします。接種費用が助成されている場合もありますので、お住いの自治体でご確認ください。

HPVは、ありふれたウイルスと聞きました。 わざわざワクチンで予防する必要はありますか。
ありふれているからといって”軽い”わけではありません。がんの原因にもなりますので予防が重要です。

HPVは、皮ふだけでなく性交渉によって生殖器の粘膜にイボをつくります。HPV感染は、子宮頸がん以外にも中咽頭がんや肛門がんなどのがんや、尖圭コンジローマや再発性喉頭乳頭種などの感染症の原因にもなります。

HPVには、がんになりやすい遺伝子型がある 

HPV(ヒトパピローマウイルス)は、性交渉によって生殖器やその周辺の粘膜にイボをつくるウイルスで、遺伝子型は200種類以上あります。16、18、31、33、45、52、58型などHPVはがんになりやすく、子宮頸がん、中咽頭がん、肛門がん、膣がん、外陰がん、陰茎がんなどの発症に関連します。6型、11型のHPVは、尖圭コンジローマや再発性喉頭乳頭種(再発性呼吸器乳頭種)などの感染症の原因となります。

 

◆子宮頸がん
子宮頸部(子宮の入口)にHPVが持続的に感染して起こるがん。ほぼ全ての子宮頸がんはHPVが原因で発症する。30~50歳代の女性に多い。

◆中咽頭がん

喫煙・飲酒やHPV感染が原因でのどの中央部分に発生するがん。近年はHPVが原因で発症するケースが増加している。男性が女性の2~4倍多く、50~70歳代に多く見られる。

◆尖圭コンジローマ
6型、11型のHPVの感染により、生殖器とその周辺に生じる特徴的な形態の良性の腫瘍。男女ともにみられる性感染症。

◆再発性喉頭乳頭種(再発性呼吸器乳頭種)
6型、11型のHPVが原因でのどにできる良性の腫瘍。子どもの場合、母親の産道を通るときに感染する場合が多い。手術で腫瘍を切除するが、再発性が高く手術が何十回も必要になる場合もある。 

HPVに感染してもほとんどは自然治癒するので、ワクチンを受けなくてもよいのではないでしょうか。
HPVに感染した人全員ががんになるわけではありません。それでも毎年、1万人以上が子宮頸がんになり、3,000人近くが亡くなっています。 

初期の子宮頸がん(上皮内がん)が急増している 


出典:国立がん研究センターがん対策情報センター「がん登録・統計」

子宮頸がんによる死亡数は増え続けている


出典:国立がん研究センターがん対策情報センター「がん登録・統計」

子育て年代の子宮頸がんが増加している


出典:国立がん研究センターがん対策情報センター「がん登録・統計」

1日30人が子宮頸がんになり、8人が死亡している

日本では、上皮内がんが急増し、毎年1万人以上が子宮頸がんになっています。また、死亡者数は数十年にわたって増加傾向にあります。

近年、20代後半から40代の子育て世代に子宮頸がんが急増しています。子宮頸がんの初期は自覚症状がないため、子宮がん検診や妊婦健診でがんが見つかることが多くあります。発見が遅れ、がんの進行によっては子宮摘出や妊娠の断念を迫られることもあります。

子宮頸がんは大人の病気ですよね。 ワクチンを接種する時期が早すぎるのではないでしょうか。
子宮頸がんを発症する人の多くは30代から40代ですが、その数年~十数年前のHPV感染が原因です。

子宮頸がんの患者数は20代後半から急増し、40代でピークを迎えます。たしかに子宮頸がんは”大人の病気”です。

でも、子宮頸がんは、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因で起こることがわかっています。がんの発症は、HPVに感染してから数年から数十年かかるといわれています。さらに、はじめての性交渉よりも前にワクチンを接種することで高い効果が期待できます。ワクチン接種の時期が早すぎるということはありません。

子宮頸がんの患者数は、20代後半で急増し、40代でピークを迎えます。がんの発症は、数年から数十年前のHPV(ヒトパピローマウイルス)感染が原因といわれていますので、10代での予防が必要なのがわかります。定期接種の対象が小学校6年生から高校1年生であることも納得です。

 

HPVワクチン接種によってHPV感染が減少


出典:Kudo R, et al. J Infect Dis. 2019 Feb 1; 219(3): 382–390.
【NIIGATA STUDY(新潟スタディ)】
新潟県内の主要都市において、20-22歳の子宮頸がん検診受診者を対象に、ワクチン接種の有無とHPVの感染状況を調べた。

 


【OCEAN STUDY(オーシャンスタディ)】
OCEANは、Osaka Clinical resEArch for HPV vacciNe の略。大阪府内の医療機関において、20歳・25歳の子宮頸がん検診受診者を対象に、ワクチン接種の有無とHPV感染状況を調べた。

前に副作用の映像を見たことがあります。不安で接種をためらってしまいます。
接種をためらう気持ちはよくわかります。安心できることを確認して個別通知(積極的な勧奨)が再開されました。

同様の症状は、ワクチンを受けていない人にも同じ頻度でみられることが確認できました。つまり、これらの症状の原因はワクチン接種ではないということです。

名古屋スタディで調べた24症状

名古屋スタディ
対象:名古屋市に2015年8月12日に住民票のある女性全員、1994年4月2日~2001年4月1日生まれ(7学年)
方法:郵送によるアンケート調査
時期:2015年9月上旬発送,9月30日締切
サンプル数:発送数 70,960件、回収数 30,793件(回答率43.4%)
解析対象:29,846件(ワクチン接種・年齢不明を除く)

 

HPVワクチン接種の副反応とされた症状とワクチン接種に、因果関係はない

2013年にHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンが定期接種となった2か月後、HPVワクチンを接種した後に、広い範囲に広がる痛みや手足の動かしにくさ、意思に関係なく体の一部が動く不随意運動などを中心とする多様な症状が起きたとして、その後8年間にわたって積極的な接種勧奨が中止となっていました。(積極的な勧奨とは、自治体からお知らせが個別に届かないということです)

2015年、 HPVワクチン接種とこれらの24症状の因果関係を調べるために、名古屋市によって7万人の住民対象の大規模疫学調査が実施されました。この調査は、「子宮頸がん予防ワクチン被害者連絡会愛知支部」の要請を受けて河村たかし名古屋市長が実行したもので、「被害者連絡会」が選定した24の症状(図参照)の有無を調べました。

調査結果から、これらの24症状とHPVワクチンの接種の有無には因果関係がなく、ワクチン接種によってこれらの24症状が増加することはないことがわかりました。

ワクチン接種後にこのような症状がみられたときには、専門医の治療によって改善することがわかっています。自己判断せずに、「ヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に症状が生じた方に対する相談窓口」に相談してください。

2021年11月から接種の積極的な勧奨が再開し、定期接種の対象者には自治体からお知らせが届きます。接種後の副反応がご心配な方は、かかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。

うちの子はまだ小学生なので感染リスクがないため、今のところ予防の必要性を感じません。
HPVは感染する前に接種することで有効性が高まります。海外の報告では早期の接種が子宮頸がんの発症リスクを低下することがわかっています。

HPVは、初めての性交渉でも感染する危険性があります。ワクチンは、感染リスクがないうちに接種して感染を予防するものです。性交渉を経験する前の年代でワクチンを接種しておきましょう。

最新データでは、HPV(ヒトパピローマウイルス) ワクチンを早期に導入した英国やスウェーデンから、子宮頸がんが減少したという報告があります。詳しくはこちら「Q:HPVワクチンは、本当に子宮頸がんを減らすことができるのでしょうか?」

子宮頸がん予防のために、6年生になったらHPVワクチン 

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは、16型、18型などのHPVの感染を防ぐことができます。ワクチン接種で、すでに感染しているHPVを排除することはできません。子宮頸がんを予防するには、HPV感染リスクのない、性交渉を経験する前に接種する必要があります。
日本では、小学校6年生から高校1年生までの女子が定期接種でHPVワクチンを受けられます。年齢的にも予防効果が高いこの年代で接種しましょう。

HPVにはだれでも感染する可能性がある 

HPVはごくありふれたウイルスで、性交渉で男性も女性も感染します。性交渉の経験がある女性のうち80%の人は、知らないうちに子宮頸がんの原因になるHPVにかかったり、治ったりしています。
「性的な活動が高い人が感染する」「結婚まで性交渉をしなければ子宮頸がんにならない」などの誤解を耳にすることがあります。これは間違いで、過去に1度でも性交渉の経験がある女性ならば誰もが感染するリスクがあります。

<医療機関のみなさま>
VPDの会では、HPVワクチンの勧奨ポスターを作成しています。
ご希望の方は事務局( info@know-vpd.jp )までメールでお問い合わせください。