12月になり、東京都では3例の麻しんが報告されました(東京都感染症週報:2023年第50週)。このうち2例は、1歳児(MRワクチン未接種)と5歳未満(ワクチン1回接種済)の子どもで、1例は50代(ワクチン接種歴不明)の成人です。いずれも海外渡航歴はなく国内で感染したとのことです。今後の感染拡大が懸念されます。
国立感染症研究所(IASR Vol.44 p136-137: 2023年9月号)によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により2021年は麻しんワクチンの初回接種率が2008年以来最低となり, 4,000万人以上の子どもたちが接種を受けられていません。2022年は世界保健機関(WHO)が分類する6つの全地域で麻しん患者の増加が観察され, 報告された全麻しん症例数は171,431例(疑い症例数は389,049例)でした。2023年6月の時点では, すでに世界全体で100,571例の報告が上がっています。多くの国で患者数が増加し、世界中でより大きな麻しん流行のリスクが高まっています。
2023年5月8日以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染対策が緩和され、訪日外国人が増えています。国内外で人の移動が活発になり、麻しん報告数が増加しました(5月8日~7月9日に18例報告)。
日本政府観光局(JNTO)によると、訪日外客数は6月連続で200万人を超え、10月以降はコロナ前と同水準に回復しています。アジア、欧米に加え、東南アジアからの旅行者が増加しています。
訪日観光客の麻しんウイルスの持ち込みだけでなく、年末年始で海外旅行をする人も渡航先で感染することがあります。海外旅行の準備として、大人も子どもも麻しんワクチン(MRワクチン)の接種をしておきましょう。
麻しんは、高熱などの症状のほか、重症化して肺炎や脳炎などの後遺症や死亡することもある重大なVPD(ワクチンで防げる病気)です。回復しても、長期の潜伏期間を経て重篤な後遺症(SSPE:亜急性硬化性全脳炎)を発症することもあります。
麻しんの予防には、2回のワクチン接種が必要です。MRワクチンは、1歳と小学校入学前(年長さん相当)の1年間に定期接種(無料)で受けられます。
2023年12月22日
NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会
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