「日本脳炎ワクチンは新しいのが出るまで待った方がいいですか?」という質問が多く寄せられます。
今のワクチンはマウスの脳でウイルスを増やす方法で製造されています。そのため、日本ではADEM(アデム、急性散在性脳脊髄炎)という脳神経の病気との関連が否定できないと言われています。
一方、準備中の新しいワクチンはサルの腎臓の細胞を用いて製造されます。脳の組織を使用しないため、理論上はADEMとの関連を否定できると考えられています。しかし、現在のワクチンも製造過程で十分に精製されているため、ワクチンには脳成分は検出されません。したがって、ADEMとの関連性は限りなくゼロと言えるのです。
ADEMはウイルス感染症後や予防接種後にまれに起こります。重い後遺症もなく治癒するのが通常の経過ですが、ウイルスなどの感染が原因なのか、予防接種が原因なのか、あるいは原因不明なのか、これらを区別することは実際には不可能です。 日本脳炎ワクチン接種後のADEMの報告は、130万回から200万回の接種に1回程度と極めてまれです。この数字は、因果関係が明確でないものも含めていますので、本当に予防接種が原因であるものはさらに少ないと考えられます。
今の日本脳炎ワクチンには年間400万回以上接種されてきた実績があります。一方、新しいワクチンは承認審査のために数百名程度に接種されたに過ぎません。1万分の1や10万、100万分の1の副反応については全く不明です。したがって、新しいワクチンの方が必ずしも安全とは言い切れません。
ということで結論。日本脳炎の予防接種は安心して今のワクチンで接種を受けてください。新しいワクチンが出るまで待つ必要はありません。
(藤岡雅司)
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