~子宮頸がんから女性と未来を守るために~
2021年11月26日、厚生労働省健康局長通知により、8年ぶりにヒトパピローマウイルス感染症に係る定期の予防接種の積極的な勧奨が再開しました。遅くとも2022年度からは、定期接種対象者への個別通知による接種勧奨が行われることとなります。
当会では、2013年6月以降、毎年厚生労働大臣に要望書を提出し、積極的勧奨の再開を求めてきました。また、会員施設をはじめとした医療機関でのポスター掲示に加え、ウェブサイトやSNS上での情報発信や全国の中学高校にむけたポスター提供など、医療関係者、教育関係者、被接種者、保護者などに直接情報を届けてきました。
しかしながら、長期に及ぶ積極的勧奨の差し控えにより、接種率は極めて低い状況であり、積極的勧奨が再開されても、以前の水準に接種率を改善することは容易ではありません。だからこそ、今こそ、国、地方自治体、医療機関そしてメディアが子宮頸がんから女性と未来を守るために、一丸となることが重要と考えます。
子宮頸がんから女性と未来を守るための当会の考え方を以下に示します。
1.接種機会を逃した者への接種機会の提供
積極的勧奨の差し控えにより接種機会を逃した者に対する特例措置は、2005年から2010年まで積極的勧奨の差し控えを行っていた日本脳炎に係る定期の予防接種の特例措置(予防接種法施行令附則第2条、予防接種実施規則附則第2条及び第3条)という先例があります。ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期の予防接種についても、積極的勧奨の差し控えにより接種機会を逃した者¹⁾に対して、国・厚生労働省は日本脳炎に係る定期の予防接種に準じた特例措置をすみやかに設定し、実施主体である市町村(特別区を含む)長は個別通知による勧奨を行うことが急務です。加えて20歳以上の対象者には子宮頸がん検診受診を推奨し、ワクチンと検診による子宮頸がん予防のより積極的な推進が必要と考えます。
1)2013~2021年度に小学校6年生から高校1年生相当年齢(1997年4月2日~2010年4月1日生まれ)の女性
2.学校教育における子宮頸がん予防の学習機会の保障
自治体、医療機関、教育機関などから情報提供を行い、ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期の予防接種について一人でも多くの対象者に知らせる必要があります。特に、厚生労働省と文部科学省が連携し学校教育において子宮頸がん予防の学習機会を保障することが重要です。そのためには、子宮頸がん予防に関する学校教育の手引き、児童及び生徒、並びに保護者への情報ツールその他の資材の作成、並びに養護教諭等に対する研修機会の提供及び医療従事者に対する子宮頸がん対策に関する最新情報の提供が必要と考えます。
3.世界標準のHPVワクチンプログラムの導入
HPVワクチンの接種によるHPV感染予防をより効果的に進めるために、9価ワクチンを定期接種として使用可能とする、定期接種対象の男性への拡大が必要です。また15歳未満では2回接種²⁾にし、被接種者負担の軽減、世界での安定供給に配慮することが望ましいと考えます。
2)WHO, WER 92(19): 241-268, 2017
4.予防接種の安全性評価システムの導入
HPVワクチンに限らず予防接種の推進には、予防接種の安全性に対する国民の信頼の維持が極めて重要です。現在の「予防接種後副反応疑い報告」は有害事象を収集するシステムで、ワクチンと有害事象の因果関係を検討する必要がある症状を検出するシステムです。このデータだけで因果関係を判断し、接種の推奨を変更することは誤った判断につながる可能性³⁾があります。したがって非接種者のデータも利用し、ワクチンと有害事象の因果関係を評価することができる「予防接種安全性評価システム」を早期に導入する必要があると考えます。
3)Shimabukuro TT et al, Vaccine 33: 4398-4405, 2015
これまでの経緯はこちらをご参照ください。
2016年8月22日 「HPV(子宮頸がん予防)ワクチンの現状についての考え方」
2013年6月29日「保護者の皆さまへ 子宮頸がん予防ワクチンの接種の考え方」