新型コロナワクチンの接種推進が急務
現在、20歳未満が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性者の約3割を占め、死亡例も2022年にオミクロン株流行後に急増し、44名にのぼります。また、COVID-19の感染後に、長期にわたる強い倦怠感やブレインフォグ(記憶障害、集中力低下)などの後遺症がみられ、子どもの場合、日常生活や学習に支障をきたし、将来への影響が危惧されます。
子どもたちにとってCOVID-19は、重大な結果につながることがあり、COVID-19から子どもたちを守るには、新型コロナワクチンの接種が必要です。また、海外では麻しんなどのVPDの流行も報告され、日本での流行を予防するには新型コロナワクチン以外のワクチンも確実に接種することが必要です。
接種間隔の考え方
子どもたちをVPDから守るには、接種できるワクチンはできるだけ早期に接種することが基本です。2022年11月21日に日本小児科学会が公表した「6か月~4歳の小児に対する新型コロナワクチンを含めた予防接種スケジュールについて」の中で、生ワクチン「接種後4週間程度は、新型コロナワクチン接種を避けることが望ましい」と推奨しました。
しかし、現在までに新型コロナワクチンと生ワクチンの接種間隔に対する有効性、安全性に関するEvidenceは報告されていません。海外では新型コロナワクチンとほかのワクチンとの接種間隔を規定している国も未だに存在します。米国では新型コロナワクチン開始時には2週間隔でほかのワクチンを接種するようにされていましたが、現在は同時接種を含めて、接種間隔の規定は撤廃されています。5~11歳に対する新型コロナワクチンの接種を検討するACIPの会議で米国小児科学会が接種間隔の撤廃を強力に主張したために接種間隔の要件がなくなりました。
現在、日本では小児の新型コロナワクチンに大きなVaccine Hesitancyがおきています。接種間隔の制約など接種を制限する規定はさらなるVaccine Hesitancyにつながる要因となります。接種率を向上させ、子どもたちをCOVID-19から守るためには接種を受けやすい環境を作ることが重要と考えます。
新型コロナワクチンとほかのワクチンとの接種間隔は、ほかのワクチン同様の規定にすることが必要です。しかし、現状は厚労省の通知のとおり、「前後にインフルエンザ以外の予防接種を行う場合、原則として新型コロナワクチン接種と13日以上の間隔を空けて」接種することとされています。VPDの流行状況によっては、ほかのワクチン接種と新型コロナワクチンの接種間隔を「接種医の判断で」短縮する必要があると考えます。
MRワクチン接種率が低下―輸入麻しんのリスク上昇
厚生労働省が令和3年度(2021年度)の麻しん風しんワクチンの接種率を公表しました。第1期の全国平均は93.5%と、MRワクチンの2回接種を開始した2006年以降で最低でした。麻しんに対する集団免疫を維持し、日本の麻しん排除状態を継続していくために必要な接種率95%を下回るのは、2009年以来です。海外ではCOVID-19の影響で2021年に4000万人の子どもたちが麻しんワクチンの接種を受けられなかったと報告されています。すでに、2022年はアフリカを中心に、45000例以上の麻しんを認め、2300例以上の死亡例が報告されています。さらに、発展途上国では麻しんワクチンのキャンペーンが資金不足などの原因で実施できていません。COVID-19の流行、ウクライナでの戦争、食糧不足、インフレが資金不足の要因になっています。2022年は23回、2023年は11回の接種キャンペーンが予定されていますが、全て実施時期が未定です。
今後、海外において大きな流行がおこる可能性が懸念されています。海外から国内に麻しんウイルスが持ち込まれた際に子どもたちを守るには、あらかじめワクチン接種しておくことが重要です。このことからも、新型コロナワクチンの接種間隔に制限を設けずに、すべてのワクチンを早期に接種することが必要な時期になっていると考えます。MRワクチンだけでなく、小児期の予防接種の接種率の低下の可能性もあります。来院のお子さんのワクチン接種歴の確認、積極的な勧奨の働きかけが必要です。
2022年12月23日
NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会
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