NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会は、ワクチン接種で子どもたちをVPDから守るための啓発活動をしています。12歳以上の子どもの新型コロナワクチン接種についての考え方を示しますので、参考になさってください。
子どもの新型コロナワクチン接種の考え方(ポイント)はこちらをご覧ください。
新型コロナウイルス感染症とワクチン接種が必要な理由
10代の新型コロナウイルス感染症は軽症・無症状、でも隔離が必要
新型コロナウイルス感染症は、世界中の人々が感染し、多くの命を奪っています。日本では、2021年6月までに80万人以上が感染し、1万5,000人近くが亡くなりました。日本の新型コロナウイルス陽性者の割合は、20代が最も多く、次いで30代、10代は40代以上と同程度¹⁾です。10代の陽性者のほとんどは軽症または無症状ですが、自宅療養、入院、ホテルで少なくとも10日間の隔離が必要です。
そもそも、なぜワクチン接種か?
新型コロナウイルス感染症に限らず、「感染源(患者)」、病原体が人から人に伝播する「感染経路」「感受性者(感染する可能性のある人)」の3つの条件がそろうと感染症が発生します²⁾。逆に言えば、3つのうち、1つでも100%の対策がとれれば、感染症はコントロールできます。
現在(2021年7月上旬)、日本では新型コロナウイルス感染症が流行しています。PCR検査の充実と陽性者の隔離を行う感染源対策、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置で人と人の接触を少なくする感染経路対策を講じていますが、新型コロナウイルス感染症のコントロールはできていません。そこで、感受性者対策としてワクチン接種が必須なのです。
ワクチン史上、もっとも有効性が高いmRNAワクチン
mRNAワクチンは、成人を対象とした臨床試験でも、承認後の検討でも非常に高い有効性が示されています³⁾。実際に接種率が高い国では、新型コロナウイルス感染者数、入院数、死亡者数が減少しています。子どもに対するワクチンの有効性も高く、12~15歳を対象に行われた臨床試験⁴⁾では、感染者は1人もでませんでした。変異株に対しても拡大が懸念されているデルタ株を含めて有効性が示されています。
これらの成績から、新型コロナワクチン(mRNAワクチン)は、ワクチン史上、最も有効性が高いワクチンと考えられます。
家庭にウイルスを持ち込まないために大人がワクチン接種
子どもたちの新型コロナウイルス感染症の7割が家庭内、1割強が学校や幼稚園・保育所などでの感染によることを考えると、周囲の大人がワクチン接種で家庭内や保育、教育施設にウイルスを持ち込まないことが重要です。
子どもたちのワクチン接種の優先順位は高くありませんし、12歳未満は接種対象ではありません。まず、保護者を含めた周りの大人はワクチン接種を済ませましょう。
高校生や、変更できない予定がある人には、ワクチン接種がおすすめ
文部科学省からの報告では、小学生から高校生の児童生徒では、家庭内感染が57%で最も高くなっています。小中学生では、家庭内感染が60%を超えています。高校生では症状のある感染者が多く、家族内感染が少なく、学校内感染、感染経路不明が多いと報告されています⁵⁾。これらのことから、高校生にはワクチン接種をおすすめします。
また新型コロナウイルス感染症の感染者は、症状の有無に関わらず隔離が必要です。受験や就活など変更やキャンセルができない予定がある人にもワクチン接種をおすすめします。
重症化リスクのある基礎疾患のあるお子さんは主治医と相談
基礎疾患のあるお子さんの中には新型コロナウイルス感染症による重症化リスクが高いお子さんがいらっしゃいます。基礎疾患のある12歳以上のお子さんの新型コロナワクチン接種については主治医と相談してください。
[重症化リスクの高い基礎疾患]
・1型糖尿病 ・先天性心疾患 ・てんかん・けいれん ・肥満 ・高血圧 ・睡眠障害
[入院リスクの高い基礎疾患]
・PTSD(心的外傷後ストレス障害) ・神経発達障害 ・2型糖尿病 ・抑うつ障害
・不安障害 ・恐怖関連障害 ・ぜんそく
日本は小児の重症例が少なく基礎疾患の詳細が不明なため、海外の報告を参照⁶⁾
接種後の局所反応、全身反応は接種翌日をピークに改善
接種した部分の痛みや腫れなどの局所反応はほとんどの人におこります。接種後の頭痛、全身倦怠感、発熱(37.5度以上)などの全身反応は、2回目接種後の多くの人にみられます。局所反応、全身反応とも、接種翌日をピークに減少し、1週間以内にほぼ改善します⁷⁾。
日本では、当初接種後のアナフィラキシーが懸念されましたが、現在は他のワクチンに比べて特に高い頻度でないことが報告されています⁸⁾。また、米国では接種後の心筋炎・心膜炎はワクチン接種との因果関係を確認しましたが、発生頻度がまれであることからこれまで通りワクチン接種を推奨しています。
ワクチン接種後のめまいや失神について
新型コロナウイルスワクチンの接種時の痛みは、他の予防接種と同じくらいか、むしろ軽いようです。めまいや失神(血管迷走神経反射)は、痛みだけではなく接種と関連した緊張で起こるため、すべての予防接種で起きる可能性があります⁹⁾。これまでに採血や予防接種でめまいや失神をおこしたことがある人も安心して受けられるように、遠慮なく接種医に伝えてください。背もたれのある椅子に座ったりベッドに寝た状態で接種するなどの工夫ができます。
ワクチン接種に迷ったときは・・・
感染したときのリスクvs接種したときのリスクで考える
どうしても判断に迷う場合は、新型コロナウイルス感染症にかかった場合とワクチン接種で副反応が出た場合を比べてみましょう。リスクvsリスク、例えば「感染すると無症状でも隔離」と「接種後の副反応は翌日をピークに減少」を考えたとき、どちらになりたくない、どちらを回避したいと感じますか。
[感染によるリスク]※ワクチン接種でこれらのリスクはほとんどなくなる
・軽症や無症状でも隔離が必要 ・隔離による予定の変更やキャンセル
・周囲へ感染を拡げるリスク ・まれに重症になるリスクがある
・日本では実態はよくわかっていないが、何らかの症状が持続するかもしれない
[ワクチン接種のリスク]※局所反応や全身反応は接種翌日をピークに、1週間ほどで改善
・接種後の接種部位の痛みや腫れなどの局所反応
・接種後の全身倦怠感、頭痛、発熱などの全身反応
・接種後のアナフィラキシー、心筋炎・心膜炎 ➡ 非常にまれ
・長期的な副反応 ➡ 現在のところ懸念されていない
さらに迷ったら、将来のシナリオを想像してみる
コロナ禍の中で、子どもたちはさまざまな制約とともに過ごしています。保護者の方がワクチン接種に迷うときには、将来のシナリオ(道筋)について考えてください。そして、お子さんとどのシナリオを選びたいかを相談してみましょう。
出典
¹⁾ 新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(速報値)https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000787852.pdf
2021年5月報人口推計https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202105.pdf
²⁾ 和田耕治他: 新型インフルエンザ対策から学ぶ包括的な感染症対策 保健医療科学 保健医療科学: 2010; 59: 94-99
³⁾ Polack FP et al: Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine N Engl J Med 2020; 383:2603-2615
⁴⁾ Frenck RW et al: Safety, Immunogenicity, and Efficacy of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Adolescents N Engl J Med
DOI: 10.1056/NEJMoa2107456
⁵⁾ 文科省学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~「学校の新しい生活様式」~(2021.4.28 Ver.6)※2021.5.28
一部修正 https://www.mext.go.jp/content/20210514-mxt_kouhou01-000007426_1.pdf
⁶⁾ Kompaniyets L et al: Underlying Medical Conditions Associated With Severe COVID-19 Illness Among Children JAMA Netw
Open. 2021;4(6):e2111182
⁷⁾ 新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)健康観察日誌集計の中間報告(8)
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000796565.pdf
⁸⁾ 新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシーとして製造販売業者から報告された事例の概要(コミナティ筋注、ファイザー株式会社)
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000796626.pdf
⁹⁾ Shimabukuro T: COVID-19 Vaccine safety updatesAdvisory Committee on Immunization Practices (ACIP)June 23, 2021
https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/downloads/slides-2021-06/03-COVID-Shimabukuro-508.pdf (2021/6/24アクセス)
¹⁰⁾ WHO: IMMUNIZATION STRESS-RELATED RESPONSES https://apps.who.int/iris/rest/bitstreams/1264052/retrieve