麻しん(はしか)にかかったあきちゃんの場合

あきちゃん(仮名)は3歳の元気な男の子でした。
一人っ子でお父さん、お母さんに大切に育てられていました。

ある日、高い熱が出て、鼻水やせきの症状もあったので、いつも行く近所の小児科のお医者さんに診てもらいました。かぜでしょうということで、いつもの水薬をもらって帰ってきました。
2日たっても熱は下がりません。鼻水やせきはひどくなるし、目やにもでてきて、いつものかぜに比べると、だいぶつらそうでした。でも3日目の夕方に熱が少し下がってきたので、お母さんは安心して、もう治るだろうと考えていました。
ところが、4日目の朝からまた高熱が出てきたので、あわててもう一度そのお医者さんに行きました。お医者さんは、あきちゃんの元気がなく唇が乾燥しているので、最初は脱水気味だろうと思ったそうです。でも、耳の後ろが赤くなっているのを見つけ、口の中に白い斑点があるのを確認して、お母さんに「はしかでしたね。少し脱水気味なので入院したほうがいいでしょう」と説明しました。

お母さんは「はしか」と聞いて少し安心しました。「はしか」なら誰でも一度はかかるものと思っていたからです。入院と聞いても心配していませんでした。
しかし、点滴をすれば脱水はすぐによくなると聞いていたのに、あきちゃんの容態は2日たってもよくなりませんでした。それどころか、息づかいもハアハアと早くなり、息をするのもつらそうになってきました。病院の主治医からは、はしかウイルスによる肺炎を起こしているので酸素が必要と説明され、心電図のモニターをつけて、酸素テントに入ることになりました。

急変したのは7日目の夕方でした。急に看護師さんがあわてた様子で病室に入ってきたと思うと、すぐに何人かの先生も入ってきました。どうなっているのか看護師さんに聞こうとしましたが、処置をするからと病室から出されました。部長の先生もやって来て、しばらくすると、病室に入るよう言われました。あきちゃんは口からチューブを入れられて、主治医の先生が胸を押していました。部長の先生は、「おそらく助からない。すぐにお父さんを呼ぶよう に」と言いました。

お父さんが病室に着いたときには、すでに昨日までのあきちゃんではありませんでした。ほどなく心臓マッサージは中止され、臨終が告げられました。主治医の説明は、はしかのウイルスによる肺炎で身体に酸素が送れないようになり、急に心臓が止まってしまったということでした。
お母さんはあきちゃんにBCG、ポリオ、三種混合のワクチンはきちんと受けさせていました。はしかのワクチンは副作用がきついと聞いていたので、もう少し大きくなってから受けさせようと考えていました。はしかのワクチンも早く受けさせていたら…と悔やんでも悔やみきれません。

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