新生児、乳児がRSウイルスに感染すると、重症になり入院したり、集中治療(酸素投与や人工呼吸)が必要となったりすることがあります。入院や集中治療が必要になった乳児の80~90%は基礎疾患がなかったと報告されています。 WHOではすべての新生児、乳児を対象にRSウイルス感染症の予防対策を検討しています。日本でも基礎疾患があるお子さんだけではなく、基礎疾患のないすべての新生児、乳児に対してRSウイルス感染症の予防が必要です。 2024年に新たに妊娠中に接種するワクチン「アブリスボ」とすべての新生児乳児を対象とした長時間作用のモノクローナル抗体「ベイフォータス」が発売されました。
ワクチン
予防法と目的 | 対象 |
RSウイルスワクチン「アブリスボ」(2024年発売) 妊娠中に接種し、母体が産生した抗体が胎盤を介しておなかの赤ちゃんに移行し、出生後の赤ちゃんのRSウイルス感染症を予防 |
妊娠24~36週の妊婦 |
モノクローナル抗体
予防法と目的 | 対象 |
「ベイフォータス」(2024年発売) RSウイルス感染症流行前に新生児、乳幼児に投与し発症、重症化を予防 |
<保険適用> |
「シナジス」(2002年発売) RSウイルス感染症流行前に基礎疾患のある新生児、乳幼児に投与し発症、重症化を予防 |
・在胎期間28週以下の早産児(12か月齢以下) ・在胎期間29~35週の早産児(6か月齢以下) ・基礎疾患(気管支肺異形成症(BPD)、血行動態に異常のある先天性心疾患、免疫不全、ダウン症候群、肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患)をもつ乳幼児(24か月齢以下) |
RSウイルス感染症は、2歳までにほとんどの子どもがかかります。正期産で生まれた基礎疾患がない子どもでも入院治療が必要になることがあります。生後6か月未満、特に生後1~2か月で入院するリスクが高く、乳児期早期の予防が重要です。 妊娠中にワクチン「アブリスボ」を接種して母親が産生した抗体が胎盤を介して胎児に移行することで出生直後から新生児の感染防御が可能になります。日本では妊娠24~36週、特に妊娠28~36週に接種した場合に予防効果が高いとされています。米国では臨床試験で早産の合併があったため、32~36週の接種が推奨されています。米国での早期の有害事象の報告では、早産の増加の報告はなく、日本での臨床試験では早産の増加は報告されていません。 妊娠中にワクチン接種をしても胎児に十分に抗体が移行する期間がなく、重症化のリスクが高い早産児や基礎疾患を合併したお子さんは、かかりつけ医と相談の上、モノクローナル抗体「ベイフォータス」または「シナジス」を受けましょう。「ベイフォータス」と「シナジス」を使用できる基礎疾患が異なります。「シナジス」の場合は、1か月ごとの注射を守ってください。
基礎疾患のない新生児、乳児のRSウイルス感染予防には、妊娠中にワクチン接種をしておくことが重要です。妊娠中にワクチン接種をしていない場合、出生後に予防薬「ベイフォータス」を接種することはできますが、自己負担であり、接種費用は非常に高額です。 欧米先進国の中では基礎疾患のないすべての新生児、乳児に対しても「ベイフォータス」の接種が推奨されています。米国では「アブリスボ」を原則無料とし接種を推奨するとともに、ワクチンと同様の制度を利用し「ベイフォータス」を原則無料で投与できます。開始されて1シーズンだけですが、すでに高い有効性が報告されています。 日本でも妊娠中のワクチン「アボリスボ」が定期接種となり、モノクローナル抗体「ベイフォータス」が定期接種ワクチン同様に無料で接種できるようになることが必要です。
(2024年9月更新)