RSウイルス感染症
RSウイルス感染症は、新生児、乳児がRSウイルスに感染すると、重症になり入院したり、集中治療(酸素投与や人工呼吸)が必要となったりすることがあります。
WHOではすべての新生児、乳児を対象にRSウイルス感染症の予防対策を検討しています。日本でも基礎疾患があるお子さんだけではなく、基礎疾患のないすべての新生児、乳児に対してRSウイルス感染症の予防が必要です。 2024年に新たに妊娠中に接種するワクチン「アブリスボ」とすべての新生児乳児を対象とした長時間作用のモノクローナル抗体「ベイフォータス」が発売されました。
RSウイルスは、新生児や乳幼児に重篤な呼吸器感染症を起こすことが最も多いウイルスです。RSウイルス感染症は、せき、くしゃみなどによる飛沫感染や接触感染により感染します。生後1歳までに50%以上の人が、2歳までにほぼ100%の人が一度はRSウイルスに感染します。
初感染のうち20~30%が気管支炎、肺炎となることがあり、生後6か月未満、特に生後1~2か月の入院症例が多いことが報告されています。再感染も多く報告されていますが、多くの場合、初感染より軽症です。年長児、成人も感染しますが多くは軽症です。しかし、高齢者が感染すると重症となる場合があります。
呼吸器症状が悪化すると入院治療が必要となる場合があります。最重症例では酸素投与や人工呼吸など集中治療が必要となります。脳炎、脳症を合併し後遺症を残すことがあり、突然死との関連も指摘されています。また、新生児期や予定日よりも早く生まれた場合の出産予定日から4週間目頃までに感染すると、明らかな呼吸器症状を認めずに、無呼吸となることがあり最も注意が必要です。
重症化のリスクが高い新生児乳児のRSウイルス感染症を予防法には3種類あります。ワクチン「アブリスボ」とモノクローナル抗体「ベイフォータス」・「シナジス」です。
アブリスボは妊娠中に接種し、妊婦が産生した抗体が胎盤を介して胎児に移行することで出生後すぐから生後6か月頃までRSウイルス感染症の発症、重症化を予防します。
ベイフォータスは基礎疾患のない乳幼児にも投与できますが、保険適用は基礎疾患のある場合だけで、基礎疾患のない場合は自費診療となります(接種費用は非常に高額です)。1回の接種で約6か月のRSウイルス感染症の発症、重症化を予防する効果があります。
シナジスは基礎疾患を持つ乳幼児を対象に保険が適用になり、保険診療の範囲で接種を受けることができます。RSウイルス感染症の流行期間を目安に月1回の投与が必要です。
(2024年9月更新)