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ワクチンについて

同時接種の必要性・安全性

同時接種は、赤ちゃんを守るためのもの

日本の赤ちゃんが1歳前に接種する定期接種のワクチンは6種類。何回か接種するワクチンもあり、接種回数は12回以上にもなります。また注射の生ワクチン同士の接種は、4週間あける必要があります。子どもが受ける注射の生ワクチンは、BCG、MR、水痘、おたふくかぜなどがあります。
そこで、有効なのが同時接種です。同時接種は必要な免疫をできるだけ早くつけて子どもを守るだけでなく、保護者の通院回数を減らすことができます。世界中の小児科医が同時接種をお奨めしているのは、予防接種スケジュールが簡単になり、接種忘れなどがなくなる(接種率があがる)だけでなく、予防という本来の目的を果たす意味で非常に重要だからなのです。


同時接種とその効果について

1同時接種とはなんですか。
2種類以上のワクチンを1回の通院で接種することです。効果や安全性は単独で接種したときと変わりません。
2なぜ、同時接種をすすめているのですか。
さな子どもは免疫が弱く子どもがかかる感染症には重い病気が多くあります。かかってしまうと、最新の医学でも良い治療法のない病気もいまだにあります。B型肝炎、ロタウイルス、小児用肺炎球菌、五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンのような0歳の早い時期に接種するワクチンは、2~3回接種しないと確実な免疫ができません。ワクチンを1種類ずつ接種していては、免疫ができるまでにたいへん時間がかかります。でも病気は待ってくれませんし、毎週のように通院するのは保護者の方やお子さんにとってたいへんな負担です。安全性も単独接種と変わらないので、ワクチンの効果を最大限に発揮させるため世界中で同時接種が行われているのです。
31種類ずつ接種するのでは、いけませんか。
当然ながら保護者の方が希望すれば、1種類ずつ接種することもできます。しかし、1種類ずつ接種していては、ワクチン本来の目的であるVPDの予防が確実にはできなくなってしまいます。ヒブや肺炎球菌による細菌性髄膜炎や百日せきのように乳児期早期からでも発症を防がなければならないVPDについては、確実な免疫をつけるのに時間がかかってしまう1種類ずつの接種はむしろ危険です。また、ロタウイルスワクチンは腸重積発症との関係で初回接種と接種完了の月齢が厳しく規定されています。この時期に接種するワクチンはどれも優先的に受けたいワクチンですので、同時接種でなければ受けることがたいへん難しくなります。こういうことも含めて、0歳に限らずどの年齢でも可能であれば同時接種をすすめています。
4同時接種のデメリットを教えてください。
同時接種のデメリットはありません。世界中のあらゆる人種や民族の子ども達に対して、10年以上前から行われていますが、何も問題は起こっていません。1回の受診で注射の本数が増えますので、保護者の方々にとっては辛いと感じられることがあるようです。しかし、単独接種であっても受ける注射の回数は結局同じですから、デメリットではありません。接種部位が腫れたり赤くなったりするなどの局所反応や発熱などが増えるのではと心配されることもありますが、トータルでは1種類ずつ接種するのと同じです。痛みに関しては、子どもの泣き方を見ていても1本だけ接種した場合と、5~6本接種した場合でも、大差はありません。そのために、自分の子どもに同時接種を受けさせたことのあるほとんどの保護者の方は次回に同時接種を希望されます。
5同時接種と混合ワクチンの違いはなんですか?
同時接種は、単独のワクチンを約2.5cm以上離れた場所に1本ずつ接種するものです。混合ワクチンは、数種類のワクチンがはじめから1本の注射液に含まれているものなので、広い意味の同時接種です。日本では破傷風、百日せき、ジフテリア・ポリオ・ヒブの五種混合(DPT-IPV-Hib)、麻しん風しん混合のMRワクチンなどが混合ワクチンです。早期に免疫をつけるだけなら同時接種でも同じですが、混合ワクチンは注射の回数を減らして子どもたちの負担を少なくするために、世界中で研究を重ねて開発されています。
61日のうち間隔をあけて2回の予防接種をするのも「同時接種」ですか。
例えば集団接種の会場で、BCGのワクチン接種を受けて、その足でかかりつけの先生のところに行って、小児用肺炎球菌ワクチンなどを受けることを同日接種と言います。これの是非に関しては専門家によって意見が異なりますが、少なくとも現在行われている定期接種のワクチンでは、行ってはいけないことになっています。一部の地域で行われているようにBCGを集団接種でなく、かかりつけの先生での個別接種にすれば解決されますが、このためには医師会などその地域全体を変更する必要がありますので、難しいことが多いのです。ただし、保護者の方々が市区町村や医師会に要望すれば実現の可能性はあります。

同時接種の安全性・副反応について

7小さな赤ちゃんのからだ(免疫機能)に負担はかかりませんか。
これは世界中で心配されました。子どもの免疫の力はまだ強くありませんが、10本のワクチンを同時接種しても子どもにかかる負担はほんのわずかで、持っている免疫力全体の0.1%くらいしか使用しません。そして実際問題として、長い間世界中で使用されて問題が起こってないことが最大の証拠(エビデンス)です。
8同時接種にすると、ワクチンの効果は減りませんか。同時接種で副反応が出やすくなったり、同時接種特有の副反応がでたりすることはありませんか。
同時接種によってワクチンの効果が減ることはありません。また混合ワクチンでは効果が減らないように工夫されています。副反応が出やすくなったり、特別な副反応が出たりすることもありません。
9子どもの体質などで同時接種をしないほうがいい場合はありますか。
ありません。逆に重い病気を持っている子どもの場合は、VPDにかかれば重症になりやすいですし、接種のために何度も来院するのが大変なので、世界中で同時接種が強く勧められています。
10万が一、同時接種で重大な副反応がおこったらどうしたらよいですか。
接種後になんらかの症状や病気が見られた場合、これを有害事象と呼びます。有害事象には、ワクチンによるものと、ワクチンによらないもの(ワクチンとは無関係なことがたまたま起こっただけ)があります。医学的には有害事象のほとんどがワクチンと無関係であることがわかっています。このようにワクチンによる重大な副反応が起こる確率は極めて低いのです。
たとえ起こっても、ほとんどの場合、どのワクチンによるものか区別できません。しかし、ワクチンによる健康被害救済制度では、どのワクチンによるものかは問題にしないで救済対象としてくれることになっています。安心して同時接種を受けてください。
11万が一、定期接種のワクチンと任意接種のワクチンで重大な副反応がおこったら、どうなりますか。
接種後にワクチンが原因で重大な副反応が起こる確率は極めて低いのですが、万一、起こってしまった場合、定期接種ワクチンは任意接種ワクチンよりも補償制度が手厚くなっています。同時接種の場合には、原則として定期接種の救済制度が適用されます。これは、どちらのワクチンが原因であるかがわからないためです。このように補償制度の面から考えますと、任意接種ワクチンを定期接種ワクチンと同時接種で受けることは、万一のときの安心につながるのです。
12「海外で使っているから日本でも安全」と考えてよいのでしょうか。
薬の場合は、民族差が少し問題になることはあります。しかしワクチンの場合は、世界中で、日本人、日系人、アジア系の子どもも同時接種を含めて受けていますが、ワクチンの常識として、安全性と効果に基本的な差はありません。日本でも、世界中で実際に行われていることを自然に受け入れてほしいですね。

同時接種の組み合わせについて

13同時接種ができないワクチンの組み合わせはありますか。
同時接種の組み合わせに制限はありません。生ワクチン同士でも、不活化ワクチン同士でも、生ワクチンと不活化ワクチンの組み合わせでも、接種年齢になってさえいれば同時接種が可能です。また、定期接種と任意接種の区別も必要ありません。当然、飲む生ワクチンと注射のワクチンの組み合わせでも問題ありません。
14新型コロナワクチンは同時接種ができますか。
2024年4月以降は、新型コロナワクチンとほかのワクチンの同時接種ができるようになりました。
15同時接種の際に、接種本数の制限はありますか。
接種の本数に関しても、接種年齢になっていれば、制限はありません。欧米では生後2か月では6本のワクチンが同時接種されています。米国では、1歳の時に、インフルエンザワクチンまで含めて最大9種類のワクチンが同時に接種されることもあります。

同時接種の実施について

16同時接種の際、体のどこの部分に接種するのですか。
今までは、腕の上の部分と下の部分に接種することで、左右合わせて4本接種が可能でした。しかし世界では、1歳前後以下の子どもに対しては大腿部に接種されてきました。この方が、接種場所も広く、痛みも少ないなど良い点が多いのです。日本小児科学会は、2011年に大腿部への接種を積極的にすすめる声明を出し、2012年からは医師や自治体向けの「予防接種ガイドライン」にも大腿部接種がイラスト付きですすめられています。大腿部接種を経験した保護者の方は、次の接種も大腿部を希望する場合がほとんどです。
17同時接種の場合、次のワクチン接種との間隔はどうなりますか。
注射の生ワクチン同士の接種間隔には、注意が必要です。同時接種で受けたワクチンの中に注射の生ワクチンが含まれる場合、次に別の注射の生ワクチンを受けるまでには4週間の間隔をあける必要があります。不活化ワクチンやロタウイルスワクチン(飲むタイプの生ワクチン)だけなら接種間隔の制限はありません。例えば、小児用肺炎球菌と五種混合ワクチン(どちらも不活化ワクチン)の同時接種なら、翌日でもほかのワクチンを接種できます。MRワクチン(注射の生ワクチン)と小児用肺炎球菌ワクチン(不活化ワクチン)を同時接種して次に不活化ワクチンを受ける場合には接種間隔の制限はありません。MRと小児用肺炎球菌ワクチンの同時接種の後に、水痘ワクチン(注射の生ワクチン)を受ける場合には4週間あける必要があります。また、同じワクチン同士では接種間隔がそれぞれ決まっていますので、かかりつけの小児科医とよく相談してください。
18同時接種は、どの医療機関でもできますか。また、かかりつけ医が同時接種に応じてくれません。どうしたらよいですか。
残念ながら、日本だけが同時接種の習慣がなかったので、絶対に私は行わないという医師もいます。「同時接種は2本まで」と決めている医師もいます。そのほかにも理由があるかも知れませんが、これは困ったことです。対応としては、同時接種をしている医師を探すしかありません。

(2024年4月更新)