麻しんウイルスによっておこる、感染力がたいへん強く命にかかわる合併症を引き起こすことも多い、たいへん重いVPDです。欧米や韓国に続いて、日本でも2015年3月に世界保健機関(WHO)から「麻しん排国」に認定されました。
しかし、未だに外国から持ち込まれた麻しんウイルスによって麻しんは発生しています。ワクチンを受ける人が多ければ流行は抑えられますが、ワクチンを受ける人が減れば必ず再流行します。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって世界の国々で麻しんやポリオなどのワクチン接種率が低迷し、世界的な流行が始まっています。日本でもワクチン接種率の低下がおこり、海外から日本国内に持ち込まれたウイルスへの感染リスクが高まっています。お子さんの予防接種について、受け忘れているワクチンがないかをあらためて確認してください。
感染して約10日の潜伏期後に、まず熱と鼻水、せき、目やになどかぜと似た症状が出ます。発熱3~4日目から体に赤い発しんが出て、口の中に「コプリック斑」と呼ばれる麻しん特有の白いブツブツがみられます。高熱は7~10日間くらい続きます。ふつうのかぜの熱とはまったく違うので、その間はたいへんつらいものです。熱が下がっても、3日経つまでは登園、登校ができません。麻しんは、年齢にかかわらず重症になることがあります。特に妊娠中は大きな問題になります。
合併症を起こしやすく気管支炎、肺炎、脳炎などが約30%の人におこり、肺炎や脳炎で亡くなる人も多数います。どの年齢でも重症になります。2001年の流行の時は、約30万人がかかり、80名前後が死亡したと推定されています。
昔、麻しんは「命定め(いのちさだめ;麻しんにかかったら、生きるか死ぬかわからないということ)」と言われました。医学が進み栄養状態がよくなった現在でも、根本的な治療法がないので「命定め」の病気であることに変わりはありません。
また、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる難病中の難病ともいわれる病気になることもあります。これは麻しんにかかって数年してから、知能の障害とけいれんがおこり、発病がわかります。残念ながら根本的な治療法はありません。
MR(麻しん風しん混合)ワクチン(定期接種・生ワクチン)で予防します。ワクチンを接種すれば、かかったとしても重症になることはまずありません。定期接種では1歳と小学校入学前に2回受けます。ただし、地域で大流行している時は生後6か月から任意接種で接種ができますので、かかりつけ医と相談してください。
大人でもかかるので、保護者の方がワクチンを受けていないときには必ずワクチン接種を受けてください。2回目の接種を受けていないようでしたら、ぜひ2回目を受けてください。たいへん強いアレルギー体質の人は、事前にかかりつけ医に相談してください。
(2024年4月更新)