A型肝炎ウイルスにより、引きおこされるVPDです。このウイルスは便から排出され、このウイルスで汚染された食べ物を食べることによってうつります。ウイルスを持っている料理人の手から食べ物についたり、自然にA型肝炎ウイルスが集まった貝を生で食べたりして、うつります。日本で報告されている患者さんの数は少ないのですが、実際はもっと多いと推定されています。
約1か月の潜伏期間の後に、発熱や倦怠感と黄疸(おうだん)があらわれて発症します。多くは数週間くらいの入院で後遺症もなく治ります。気がつかない程度に軽いこともありますが、劇症肝炎といって命にかかわることもあります。衛生状態が良くなったので、自然感染の機会が激減し、60歳代以下の日本人のほとんどは免疫を持っていません。そのため免疫をつけるにはワクチンが有効です。
細胆管炎性肝炎(さいたんかんえんせいかんえん)といって、治るのに半年くらいかかる場合もあります。まれですが、A型肝炎でも劇症肝炎になると、死亡することがあります。
A型肝炎ワクチン(任意接種、不活化ワクチン)で予防します。60歳以下のほとんどの日本はA型肝炎に対する免疫持っておりません。十分に加熱した食べ物からはうつりませんが、ウイルスがついた手で食べ物に触るとうつる可能性もあります。回転寿司店で料理人を介して集団感染した例もあります。
米国ではA型肝炎ワクチンは子どもの定期接種になっていて、1歳から全員が受けるのが基本です。中・低開発国ではA型肝炎は常に流行していますが、欧米豪州などでも流行することがあります。海外旅行や長期滞在時には子どもでも接種が強くすすめられます。
日本でもようやく、2013年3月から、子どもでもA型肝炎ワクチン(不活化ワクチン)を受けられるようになりました。1歳以上であれば、2-4週間の間隔で2回接種し、その約半年後に3回目を接種します。接種量は大人と同じ0.5mlです。皮下接種または筋肉内に接種(筋注)します。筋肉内注射の部位は、2歳までは太もも(大腿部)、3歳からは肩(三角筋)です。筋肉内注射の長所は、注射部位の痛みや腫れが少なく、免疫獲得も皮下注射に比べてやや優れていることです。不活化ワクチンの接種は、世界では筋肉内注射が標準ですので、少しですが世界の標準に近づきました。
(2024年4月更新)