VPDにかかると、重い後遺症が残ったり、命がおびやかされることがあります。まさかと思われるかもしれませんが、麻しん(はしか)やおたふくかぜのようによく知られた病気でも、重い後遺症が残ったり、命を落としたりすることがあるのです。
次にあげるケースは、小児科医として実際に体験したことをもとに書かれています。決して特殊な例ではありません。ワクチンを接種しないと誰にでも起こり得るということを、知っていただきたいと思います。
子どもがVPDにかかると、病院や診療所に通院や入院することになり、保育所や幼稚園、学校などを長期間休むことになって、とても大変ですね。
また、かかった本人だけでなく、保護者や家族の方々の日常生活にも、さまざまな影響が出ます。肉体的にも、精神的にも、また、経済的にも大きな負担がかかってしまいます。
妊娠中の女性がVPDに感染すると、赤ちゃんに重大な影響が出ることがあります。たとえば、風しんは、普通の経過では軽い病気と考えられていますが、妊娠5か月までの女性がかかると、へその緒を通じておなかの赤ちゃんが風しんに感染することがあります。妊娠初期
であればあるほど影響が出やすく、生まれつき目が見えなかったり、耳が聞こえなかったり、心臓の壁に穴が開いているなどの障害を残すことが知られています。これらの症状は、「先天性風しん症候群(CRS)」と呼ばれています。
2012年~2013年には風しんが大流行し、20代~30代の大人がかかるケースが多くみられました。先天性風しん症候群(CRS)の被害を出さないためには、男女を問わず予防接種をうけることが大切です。妊娠中は風しんワクチンを受けられませんので、女性の場合は妊娠前に接種をしなければなりません。家庭だけでなく職場で感染することもありますので、大人も子どもも、男性も女性も、抗体が確実にある人を除いて全員がMRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)を接種しましょう。
もしワクチンを接種しなかったら、ワクチンがなかった200年前と同じですよね。200年前のようにみんながかかったら、どうなるのでしょう?医学が進歩したから治療すれば平気だと思うかもしれません。でも、現在の最新医学をもってしても、VPDにかかってしまうと、根本的な治療法がないのです。そのために、今でも毎年、子どもも大人も多くの人が、亡くなったり後遺症を残したりしているのです。
(2024年4月更新)